高温での面心立方金属に原子空孔集合体を数個から数十個を導入した時の移動、合体過程を調べた。照射実験により何個のフレンケル欠陥が形成されるか、その割合に応じた欠陥を導入して行なえるようPKA形成の断面積を求めた。次に、コンピュータ上で4000個のNi原子からなる完全結晶を1300Kの熱平衡状態にした。その結晶中に10個の原子空孔からなる三角形の板状の集合体を(111)面上に4個ランダムに選んだ位置に導入した。その後、1300Kに保った状態でMD法による計算を行ない各時間ステップでの原子空孔集合体の構造変化の過程を求めた。その時間ごとの構造はグラフィック処理により解析した。他の温度でのシミュレーションも実行した。それらは各クラスターの合体の順番は異なっているがクラスターとして合体した。その過程には、原子空孔集合体で部分的に3個の原子空孔からなる積層欠陥四面体(sft)構造になり、その内部に落ち込んだ原子が四面体の頂点に移動することで全体として原子空孔集合体が移動する機構、(110)の方向に沿って原子が移動することで全体として原子空孔集合体が移動する機構、部分的に八面体構造となり、その内部に原子が落ち込んだ後、八面体の頂点に移動することで全体として原子空孔集合体が移動する機構が観察ざれた。Niの移動の活性化エネルギーは点欠陥ではE_m=1.13eV、小さい原子空孔集合体では0.4eVであった。17個の原子空孔からなる原子空孔集合体と点欠陥との結合エネルギーはE_b=0.8eVであるため、原子空孔1個が原子空孔集合体から蒸発するのに必要なエネルギーはE_m+E_b=1.93eVとなりこのことからも1個づつ原子空孔が分解することはないと考えられる。また、Niでは、5個以上100個までの原子空孔集合体の形成エネルギーは三角形状、ボイド構造、sft構造の内、ボイド構造が最も低く100個から136個ではボイド構造とsft構造とはほぼ同じ値となった。
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