研究概要 |
顕微鏡用試料加熱装置を導入して亜テルル酸カリウム(K_2TeO_3)単結晶の室温近傍での光学観測を行った。鹿革をもちいて十分に表面を研磨した単結晶試料を光学観測に使用した。コノスコープ像の観測により、二軸性結晶であることが確認された。亜テルル酸カリウム結晶表面の偏光観測により、(bc)面内では鱗状の表面模様、(ab)面内ではb軸方向に整列した細長い模様、(ac)面内では不規則な模様の存在が観測された。これらの観測結果から、亜テルル酸カリウム単結晶中には特異なラメラ組織状の形態を持つドメイン構造の存在が分かった。室温から363Kまで昇温しながらの偏光観測により、(ac)表面では343K付近で結晶表面にひび割れによる亀裂模様が出現した。しかし、(bc)、(ab)表面での観測ではこのような表面のひび割れは観測されなかった。亜テルル酸カリウム結晶では、b軸が分極軸であることが誘電測定から確認されている。b軸が分極軸によるため、大きな歪みが(ac)表面に垂直な方向に加わることがこのひび割れの原因と考えられる。結晶を363Kまで昇温すると結晶表面が透明状態から白く変化する。したがって、363K以上の温度での光学観測は不可能であった。このような挙動は、Kim等(J.Phys.Soc.Jpn.,66,2204(1997))の複屈折の測定結果と同じである。この原因は表面構造が変化して光を散乱するためと考えられるが、このような表面構造の変化の原因を究明中である。また(NH_4)_2SO_4、K_2SeO_4、(NH_4)_2BeF_4などを広範囲の温度領域にわたって表面観測や複屈折の測定をおこない硫安系強誘電体単結晶表面とK_2TeO_3単結晶の光学的性質の比較・検討を行う予定である。
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