研究概要 |
誘電測定により亜テルル酸カリウム(K_2TeO_3)単結晶が,室温近傍で逐次相転移現象を示す強誘電体である可能性が見出された.亜テルル酸カリウムの偏光顕微鏡による結晶表面観察により,単結晶表面に不規則なラメラ形状の模様が観測され,誘電体のドメイン構造と考えられた.硫安系強誘電体として知られる硫酸アンモニウムなどの物質群は複数の相転移点をもつ.これらと比較すると,亜テルル酸カリウム単結晶は,複数の転移温度をもつ類似点と,転移温度が室温領域にあるなどの相違点をもち,酸素属原子をイオン原子団の中心原子としてもつなどの特徴があった.これらの結晶の強誘電性の出現機構の違いを明らかにするためにドメイン構造や複屈折の測定をおこない,硫安系強誘電体との比較・検討から強誘電性の発現機構を表面構造の変化と光学的性質から明らかにするために,硫安系強誘電体単結晶の光学観測を広範囲の温度領域にわたっておこなった. 硫酸アンモニウム単結晶の相転移に伴うドメイン領域の移動を干渉色の変化として検出した.セレン酸カリウム,フッ化ベリリウム酸アンモニウムでは,インコメンシュレート相の温度範囲で干渉色の色相変化がなく,レターデーションが一定であることから超格子構造の存在を光学的に確認できた.単結晶の室温近傍でのX線解析よりK_2TeO_3水溶液から育成した単結晶はK_2Te_2O_5・3H_2Oに変化しており,風解現象などによる結晶表面の変化が生じることが判明した.
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