研究課題/領域番号 |
11650697
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤井 達生 岡山大学, 工学部, 助教授 (10222259)
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研究分担者 |
中西 真 岡山大学, 工学部, 助手 (10284085)
高田 潤 岡山大学, 工学部, 教授 (60093259)
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キーワード | 磁性半導体 / 酸化鉄 / エピタキシャル薄膜 / 交換結合 / ヘマタイト / コバルトフェライト / スピンフリップ |
研究概要 |
電子の持つ電荷とスピンという2つの自由度を同時に兼ね備えた新しい材料「磁性半導体」は、従来の磁性体や半導体の枠では捉え切れない新しい機能性を示す量子デバイス材料として、非常な注目を浴びている。我々は、反強磁性絶縁体(ヘマタイト)とフェリ磁性半導体(ヘマタイト-イルメナイト固溶体)の交換結合膜を作製することにより、反強磁性絶縁体層の磁気異方性変化利用して磁性半導体内のスピン伝導を精密に制御する手法を、本研究において初めて提案している。そこで平成11年度の研究において、まず、酸化物反強磁性体層と酸化物フェリ磁性体層の間に働く交換結合を明らかにすることを企て、サファイアR面単結晶基板上にへリコンプラズマ・スパッタ法を使用して、ヘマタイト/コバルトフェライト2層膜の作製を行ない、その磁気特性の検討を行なった。 サファイアR面単結晶基板上にエピタキシャル成長したヘマタイト層は、非常に特異なスピンフリップ転移を持つことが知られている。すなわち、室温で膜面に垂直方向を向いているヘマタイトのスピン軸は、約100℃以上の高温で突如90°回転し膜面内を向く。しかし、ヘマタイト層の上にコバルトフェライト層を重ねたヘマタイト/コバルトフェライト2層膜では、ヘマタイト層のスピン軸は膜面に垂直方向を向いたままであり、スピンフリップ転移が消失することが明らかとなった。一方、コバルトフェライト層のスピン軸は、全ての温度範囲において膜面内を向いていた。この結果は、反強磁性体層と強磁性体層のスピン軸は互いに垂直に結合するというKoonモデルを支持するものである。また、ヘマタイト層のスピンフリップ転移が消失したということは、面内磁気異方性の大きなコバルトフェライト層がヘマタイト層と強く交換結合した結果であると考えられ、酸化鉄磁性体同士においても交換結合膜が成立することが確認された。
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