光触媒活性を有する二酸化チタン(TiO2)薄膜に、別の種々の金属酸化物薄膜(10種)を積層させ、有機物光分解反応に対する活性試験を行った。尚、これらの薄膜は、すべてそれぞれの金属アルコキシドの加水分解重縮合反応を利用したゾル・ゲル法により製膜し、活性試験は、330nm以下の光をカットしたキセノンランプを使って、水溶液中の有機物(サリチル酸、オレンジII、ビスフェノールA、メチレンブルー)に対して行った。これまでに得られた成果を以下に記す。 1.TiO2にSnO2やIn2O3を積層させたTiO2-SnO2、SnO2-TiO2、TiO2-In2O3、In2O3-TiO22種積層薄膜は、均質で透明性に優れ、TiO2単独の薄膜より光触媒活性が大きくなった。 2.TiO2にSnO2とIn2O3の2種類の薄膜を同時に積層させたIn2O3-TiO2-SnO2、TiO2-In2O3-SnO2 3種積層薄膜も、均質で透明性に優れ、2種積層薄膜と同様にTiO2単独の薄膜より活性が大きくなった。 これらの理由としては、TiO2より伝導帯の低いSnO2やIn2O3を積層させることで、TiO2の光吸収により生じる伝導電子が速やかにこれらのバンドに移動し、電子と正孔の再結合が防がれていること、触媒表面の性質の違いなどによるものと考えられる。 また、TiO2-SnO2積層薄膜においては、SnO2薄膜上でも光照射後水滴の接触角低下が見られ、TiO2薄膜の場合と同様に超親水性状態を示した。 今後は、機構等について詳細に検討するとともに、これらの成果を学術論文誌に発表する予定である。
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