再利用・リサイクル型鉄アルミナイド基多元系複合材料開発の意義を明確化するために、地球環境問題と金属材料の循環性について検討を行った。その結果、21世紀の循環型社会を想定した場合、現在の鉄とアルミニウムのフローは、将来的にも最も基本的なマテリアル・フローでありつづけると予測されるため、エネルギー消費や排出二酸化炭素量、あるいは資源的問題からも、鉄アルミナイド基材料の早期実用化が大いに期待されることが明らかになった。とりわけ、鉄アルミナイド系金属間化合物では、凍結された熱空孔が材料特性に大きな影響を及ぼすことが、近年たいへん注目されているため、この点に着目し、点欠陥制御工学という新しい材料工学の概念を提案した。原子空孔は、鉄アルミナイド中では第3番目の元素として取り扱うことが可能であるが、本来実体のない元素であるため、再生の段階で分離精製の必要がなく、再利用・リサイクル型材料としてはもっとも適切な合金添加元素であると見なすことができる。次いで、再利用・リサイクル型鉄アルミナイド基多元系複合材料として、B2型FeAlと原子空孔との複合化を図った。まず、空孔形成エネルギー等を用いて、B2型FeAl中の熱空孔の濃度を見積もったところ、融点直下では単空孔で10%程度、空孔対で50%近く存在していることが示唆された。そこで、これら大量の熱空孔をできる限り損失することなく室温に凍結するために、単ロール法によりFe-46mol%Alの急冷凝固リボンを作製した。それによって、この鉄アルミナイドは著しく強化された。今後、この凍結空孔の再配列技術などが、必要となるであろうことが予測された。
|