研究概要 |
動物の骨や歯、卵、植物の稲、珪藻などは外部環境から無機質を取り込み、生体高分子中に沈着して有機・無機の複合材料、バイオコンポジットを形成している。本研究では、このようなバイオコンポジットを模倣して、セルロース系の有機・無機ハイブリッドを調製しその力学特性を評価した。バクテリアセルロースハイドロゲルは、平成11年度と同様にして調製した。シリカとのハイブリッド化は、バクテリアセルロースをテトラエトキシシラン(TEOS)を水に分散させて得られるシラノースゾル中に浸漬することによって得た。平成11年度はこのようなハイドロゲルのクリープや応力緩和等を水中で測定した。バクテリアセルロースゲルは乾燥するとセルロースフィルムが得られる。平成12年度は、このような乾燥セルロースフィルムの力学特性や吸湿特性を調べた。バクテリアセルロースフィルムの応力-歪み測定を行うと、破断応力は123Mpaで、伸びは7.1%であった。しかしTEOSを10%加えたハイブリッドでは、破断応力160Mpa、20%加えたものでは178Mpaと大幅に増大した。また動的粘弾性の温度依存性を測定すると、シリカを含まないバクテリアセルロースフィルムでは、動的弾性率,E′は30℃で約10GPaであったが230℃では15GPaとなり温度依存性は極めて小さい。TEOSを10,20%と加えると30℃でのE′はそれぞれ28,30GPaと大幅に増大する。バクテリアセルロースフィルムの水分吸着挙動を測定すると、無添加のものでは湿度80%で約12%の水分を吸着するが、TEOSを10%添加すると10%、20%では8%と減少した。また、湿度を変化させながら動的粘弾性を測定したが、TEOSを添加したものも、しないものも湿度変化による弾性率の低下は観測されなかった。
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