エポキシ樹脂ネットワークに無機ネットワークをゾル-ゲル反応を利用してハイブリッド化し、エポキシ樹脂の熱的・力学的性質や難燃性を向上させることを目的に研究を行った。その結果、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂を有機モノマーであると同時にゾル-ゲル法の溶媒として用い、その中でシランアルコキサイドを重合することによってエポキシ/シリカハイブリッド体を調製することに成功した。合成条件を検討し、塩基性条件下にエポキシ樹脂とシランアルコキサイドの反応速度がほぼ同じとなる硬化温度を選ぶことによって、任意の組成で透明・均一なハイブリッド体の得られることを見いだした。 得られたハイブリッド体およびこれを高温(800℃以上)で熱処理した試料の相構造を透過型および走査型電子顕微鏡を用いて検討した。その結果、エポキシ/シリカハイブリッド体はシリカネットワークがエポキシ樹脂中にほぼ均一に分散した相互侵入ネットワーク構造をもつと考えられることを示した。 シリカネットワークとのハイブリッド化によってエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、表面硬度は非常に大きく向上したが、一方で伸びや強靭性は低下した。これは、無機ネットワークのハイブリッド化によってエポキシ樹脂ネットワークの運動性が強く抑制されたためと考えられる。また、エポキシ/シリカハイブリッド体が難接着性材料であるシリコーンゴムに対して非常に優れた接着性をもつことが見いだされた。これは、シランアルコキサイドがシリコーンゴム中に侵入して重合し、界面で化学結合を形成するためと考えられることが示された。
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