研究課題/領域番号 |
11650716
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
井口 栄資 横浜国立大学, 工学部, 教授 (60017960)
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研究分担者 |
中津川 博 横浜国立大学, 工学部, 助手 (40303086)
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キーワード | 環境・エネルギー問題 / 高温空気中使用熱電変換材料 / 性能指数 / 3d-電子構造 / 低スピン状態 / Co-強相関電子系酸化物 / 電気抵抗率 / 熱起電力 |
研究概要 |
環境・エネルギー問題の大幅な改善を図るために空気中高温で使用に耐え得るBi_<2-x>Pb_xSr_<3-y>Y_yCo_2O_<9-δ>-系を昨年に引き続きPb及びYの置換量xとyの組合せを変えることにより熱電機能の変化を調べ、最適な組合せを探索した。試料作製ではx、yをそれぞれ0.3から0.7まで変化させた。熱電変換機能の性能指数はZ=S^2/ρκで与えられ、Zの値が大きな材料ほど優れた熱電変換材料である。ここでS、ρ、κは熱起電力、電気抵抗率及び熱伝導率である。実験はρとSを室温以下での低温領域で温度の関数として測定し、熱電機能の一つの目安である電力因子S^2/ρを得た。その結果x=y=0.5の試料が最大の電力因子を示した。低温でのこの結果に基き、300K〜800Kの高温領域でx=y=0.5の試料のS、ρ、κをそれぞれ温度の関数として測定した結果、性能指数Zは300Kでは約2×10^<-5>K^<-1>800Kでは約7×10^<-5>K^<-1>であり、温度上昇に伴い増加し、空気中高温使用にとっては非常に有利な結果が出られた。またこの性能指数の値は他の酸化物熱電材料と比較しても遜色がない。更にこの系にとって有利な点は電気抵抗率が試料密度に依存し、密度が大きいと抵抗率が下がる。今年度はセラミックス試料を用いたが、この系の融点が比較的低いので来年度は溶融インゴット試料の作製を試みる。これにより抵抗率が1/50に減少し、従って性能指数が50倍になる可能性があり、もしこれが実現したら、これまでに開発された最も優れた高温用熱電材料となりうる。 物理的には電子添加をもたらすPb-置換、正孔を添加するY-置換は合い矛盾するにもかかわらず、(x、y)の組合せにより極めて優れた熱電機能が得られたのは、この系においてはキャリアーの濃度ではなく、結晶構造の微細変化による決まる電子構造及びスピン状態が熱電変換機能を決定していることが解明された。
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