研究概要 |
高温廃熱の再利用を目的として効率よく電力に変換できる新しい熱電変換材料の開発はエネルギー及び環境の両方の問題点から注目を浴びている。しかし、変換効率はまだ低く限られた用途でしか使用されていないのが現状であり、より高効率な熱電変換材料が望まれている。本研究では、昨年に引き続き、固相反応法を用いて(Bi, Pb)-(Sr, Y)-Co-O系多結晶焼結体を系統的に作製し、その熱電特性を測定し伝導機構の解明を試みた。熱電変換材料として求められる物理的機能は低電気抵抗、低熱伝導率及び高熱起電力である。特に電気抵抗率の低下は熱電特性に直接影響を与えるので、本年度の研究に於いても、抵抗率の低下に主眼を於いた。 この様な戦略の下で実験を行ない以下のような結果を得た。Sr量を3から2へと減らすことで不純物相の減少させ、それに伴い抵抗率を減少に成功した。またY置換による数桁に及ぶ大幅な抵抗率の減少は、Co-O間距離の減少に起因するCo3degとO2pレベル間のCharge-Transfer(CT)ギャップの変化に基づくことを解明した。これらの結果から本研究が対象としている(Bi,Pb)-(Sr,Y)-Co-O系多結晶焼結体ではBi_<1.5>Pb_<0.5>Sr_<1.7>Y_<0.5>Co_2O_<9-δ>が最適な熱電材料であるとの結論を得た。更にこの試料をhot press法で作製することで、電気伝導面が整列し、焼結密度の増加し、抵抗率が著しく低下することより、優れた熱電特性が得られることが確認された。また熱起電力を増加させる目的でCoのスピン状態を変えるために、CoサイトをGaで置換した。磁化率測定の結果から、Ga置換によってCo^<4+>が減少しており、それに伴い熱起電力が増加した。最後に、得られた最大のpower factorは300Kで4.6×10^<-7>W/K^2cmであった
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