本研究では、γ系の耐熱鋼である25Cr-20NiNbN(TP310CbN)鋼を対象とした。本鋼はSUS103S鋼に窒素と化学的に親和力の強いCrおよびNbが添加されており、この化学的親和力のゆえに強制固溶させた窒素と置換型固溶元素のCrがI-Sクラスタ-を形成して固溶強化に寄与している可能性がある。また、25Cr-20NiNbN(TP310CbN)鋼はMX型の微細析出物をも含み、析出強化型合金でもあるので、強化機構は複雑である。本研究では、それぞれの強化機構の寄与を分離するために以下の試験、すなわち、(1)定荷重クリープ試験、(2)瞬間応力負荷にともなう瞬間塑性歪の有無を調べる試験、(3)応力緩和試験、(4)瞬間応力負荷後一定時間に生じる塑性歪速度を調べる試験を行った。実験結果を詳細に検討し、(1)定荷重クリープの挙動を記述するための構成方程式における仮想的初期歪速度の応力及び温度依存性を決定した。(2)NbとNからなるI-Sクラスタ-が固溶強化に寄与していること、(3)実験条件にも依存するが、有効応力成分は変形応力の16%程度になること、(4)析出物から生じるしきい応力がおよそ190MPaであることが明らかになった。また、これらのことから、見掛けの応力指数(8.3)が2.1から3.7程度になることを示した。
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