研究概要 |
新しい軽量耐熱材料として期待されるγ-TiAl相中では、高Al濃度領域において、母相L1_0構造をベースとする微細な長周期規則相が形成され、その結果、力学特性は、その周期構造、析出・分布形態によって支配される。本研究では、長周期規則相の発達度合いの低い(Al,Ga)-rich(Al,Ga)Ti急冷凝固薄帯を出発材料として、長周期規則相の規則化・析出過程を明らかにした。 初年度(平成11年度)の研究成果としては、γ-TiAl相のAl-rich組成域において形成される長周期規則相の安定性が、強く温度やAl濃度に依存することを、透過型電子顕微鏡による詳細な組織観察により明らかにした。さらに適切な焼鈍によって、安定長周期相の構造、周期性は変化し、例えば、Ti-62.5at.%Al急冷リボン材を700℃にて熱処理した場合には、安定相は、h-Al_2Ti相から一度、Al_5Ti_3相を析出した後、h-Al_2Ti相を介してr-Al_2Ti相へと変態することを見出すとともに、変態経路は、それぞれの長周期相における結晶構造の対称性、ならびにそれにともなう体積歪み量の違いによって理解された。 最終年度(平成12年度)は、調査領域をTi-Al系から、Ti-Ga二元系ならびにTi-Al-Ga三元系へと拡大し、安定長周期相の規則化ならびに遷移構造の研究を行った。Ti-Ga系には、Ti-Al系に存在しない、5倍周期構造を持つGa_3Ti_2長周期構造が存在するため、三元系へと拡大することでTi-Al系に存在する3倍周期のh-Al_2Ti、4倍周期のAl_5Ti_3に加えてその安定性を議論できた。(Al,Ga)-rich(Al,Ga)Ti領域では、母相をL1_0相とする連続固溶体領域が存在し、温度、組成に依存して異なる長周期相が発現した。AlをGaで置換、もしくは熱処理温度の低下にともなって、その安定構造は、2:1構造、5:3構造、3:2構造へと変化した。この遷移は、周期性ならびに{310)濃度波の連続的変化から合理的に説明された。 以上の結果から、(Al,Ga)-rich(Al,Ga)Tiにて、力学特性に重要な影響を及ぼすと考えられる長周期相の安定性を明らかにするとともに、その遷移過程について解明できたものと考える。
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