(1)アルカリ処理法と組成傾斜コーティング法 所定の熱処理を施したTi-6Al-4V合金をCT試験片に加工、表面研磨し、疲労予き裂を5mm導入した。5mol/l水酸化ナトリウム水溶液をウォーターバス中で60℃に保持し、24時間浸漬した。アルカリ処理した試験片を恒温槽内で37℃に保持し、24時間乾燥させた。アルカリ処理を安定化するため、600℃で1時間熱処理を施した。その後、擬似体液(SBF)に所定の時間浸漬し、実験に供した。 (2)組成傾斜の確認 薄膜X線回折の結果、アルカリ処理とSBFに浸漬した試験片の表面には、アパタイトおよび中間層である酸化チタン等の形成が確認されている。オージェ分光の分析結果、最表面では酸素が多く存在しており、基板内部方向にチタンの割合が多くなっている。約400nm程度の厚さを有する不動態皮膜を形成していることも確認されている。いずれにしても組成傾斜に近い構造である。 (3)自己修復機能の発現とその機構 アルカリ処理を施し、表面に生体適合性を付与したチタン合金の試験片を擬似体液に浸漬することにより、表面にチタン合金とアパタイトの強固な傾斜材料を形成し、き裂を修復させる。組成傾斜アパタイトコーティングにより、約10MPa√mの破壊靭性が向上する。その向上は外部要因Extrjnsic tougheningにより説明できる。すなわち、チタン合金と傾斜膜の強度差により、最初、チタン合金で降伏が生じ、き裂先端の鈍化により、外部の応力拡大係数Kの低下をもたらし、破壊靭性が見かけ上増加したと考える。
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