研究課題/領域番号 |
11650725
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中野 博昭 東海大学, 開発工学部, 教授 (60056330)
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研究分担者 |
久慈 俊郎 三井金属鉱業(株), 総合研究所, 主任研究員
相澤 龍彦 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (10134660)
内田 裕久 東海大学, 工学部, 教授 (20147119)
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キーワード | 水素吸蔵合金 / メカニカルグラインディング / 水素化物電極 / 合金粉末の取り出し法 / 圧力-組成等温泉 / ナノ構造 |
研究概要 |
水素吸蔵合金の水素化物生成エンタルピーと原子の金属結合半径あるいは電気陰性度の関係を基に、10種類(AB_5系:2種類、AB_2系:C15型4種類、C14型4種類)のNi-MH二次電池用合金を作製し、ボールミルによりメカニカルグラインディング(MG)処理した試料の組織形態変化と水素吸放出特性を気相反応および電気化学的立場から研究した。また、C15型合金の1つの組成と同一の合金をメカニカルアロイング(MA)により作製し、若干の検討を行った。 (1)原料合金の特性評価 作製した合金のほとんどは、設計通りの電気化学特性(電気化学的に合金に吸蔵された水素量、放電容量、高率放電特性等)と水素化物生成エンタルピーを有し、著者等の合金設計法の信頼性が高いことが裏付けられた。 (2)メカニカルグラインディング(MG)処理物のボールミル容器からの取り出し方法 70時間MG処理したMmNi_<4.1>Co_<0.4>Mn_<0.2>Al_<0.3>Fe_<0.1>合金の酸化を出来るだけ防ぎ、空気中での粉末の取り扱いを容易にする方法として、ヘキサン、2-プロパノール、エタノール等の有機溶媒を用いる方法を開発した。このために用いる溶媒は、揮発性があり、しかも沸点の高いものが優れていることが電気化学的特性と合金粉末の酸素濃度から裏付けられた。 (3)MG処理時間に伴う合金粉末の組織形態変化および特性評価 AB_5系(MmNi_<4.1>Co_<0.4>Mn_<0.2>Al_<0.3>Fe_<0.1>)およびAB_2系のC15型(Zr_<0.95>Ti_<0.05>(V_<0.10>Ni_<0.57>Mn_<0.28>Cr_<0.05>)_<2.1>)とC14型(Zr_<0.65>Ti_<0.35>(V_<0.10>Ni_<0.57>Mn_<0.28>Co_<0.05>)_<1.82>)を5〜200(425)時間MG処理した。いずれの合金も、MG処理時間が増加するに伴って合金粉末粒子が、SEM像より球状に泣いウルフ多面体となること、X線パターンよりアモルファス化が進行すること、また数nmまで結晶子サイズが微細化することがわかった。 P-C-T曲線(固相-気相反応)の最大吸蔵水素量は、MG処理時間が5〜30時間付近までは急激に、その後は緩慢に減少した。また、プラトーの中心付近の平衡水素圧は、MG処理時間の増加に伴って増加する傾向が見られた。一方、電気化学的に吸蔵された水素量と放電容量も、MG処理時間に対して同様の傾向を示した。これらの結果は、結晶子サイズに大きく依存した。すなわち、結晶子径が数百nm(原料粉末)から数十nmの領域では、吸蔵水素量および放電容量はほぼ直線的に減少するが、数nm領域に近づくにつれてこれらの値はさらに急激に減少する。これは、結晶子サイズが数nmの領域に近づくに連れてバルク領域がなくなり、合金粉末の性質が急激に変化するためと考えられる。したがって、MG処理は、P-C-T特性および電気化学的特性によい影響を及ぼさないと結論できる。 (4)合金粉末とNi粉末とのメカニカルアロイング(MA) 上記3種類の合金粉末と10%Ni粉末の混合物の5時間MA物は、Ni粉を含まない各合金の5時間MG物よりもわずかに放電容量に増加が見られた(増加は10%以内)が、顕著なMA効果とはいえない。
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