目的:シリコンデバイスの高集積化に伴うシリカ酸化皮膜形成方法の有力な手法であるオゾンガスによるシリコン基材料の酸化に関する基礎研究を目的として研究を行った。 実験方法:酸化実験用試料には、n型シリコンウエハ、CVD炭化ケイ素および単結晶6H炭化ケイ素を用いた。オゾンガスの発生は放電式オゾナイザを用い、最大0.07atmのオゾン分圧を達成することができる。酸化温度は973Kとした。酸化速度の評価は形成された酸化皮膜厚さをエリプソメータを用いて測定することにより行った。 結果: (1)酸化速度 オゾン含有雰囲気における酸化速度はシリコン、炭化ケイ素いずれにおいても放物線則で説明することができた。純酸素中と比較すると非常に大きな酸化速度が得られた。純酸素中では酸化速度は、シリコン、炭化ケイ素C面、炭化ケイ素Si面となることが報告されているが、オゾン含有雰囲気では、炭化ケイ素C面の酸化速度がシリコンのよりも大きくなるという特異な挙動が観察された。炭化ケイ素C面上に形成される酸化皮膜中には、オゾン酸化後に炭素の存在がSIMSにより確認された。この炭素が酸化速度に影響を及ぼしていると考えられる。 (2)酸化速度のオゾン分圧依存性 オゾンガス分圧と放物線速度定数との間には比例関係が得られた。オゾンガスの解離により形成される原子状酸素の酸化皮膜中を通る拡散が律速段階であると結論づけられる。また、この比例領域で酸化速度定数の温度依存性を検討することにより、意味のある活性化エネルギーが得られると予想され、将来的には、より低温における酸化速度の研究に関する指針も与えることができた。また、オゾン酸化速度に及ぼすArガスおよびCO_2ガス分圧の影響を調べたところ、オゾンガスの解離を促進するCO_2ガスにおいて、酸化速度が増加し、原子状酸素の拡散律速が確かめられた。
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