水晶微量天秤(QCM)あるいは塗装したステンレス鋼板に種々の量の海塩を付着させ、所定の湿度(RH)下での海塩の吸着水量を測定した。併せて模擬海塩に種々の量の水を加え、所定の(水/海塩)-質量比における抽出水溶液の比重や比抵抗を測定した。これらの結果をもとに、種々のRH下での海塩が吸水してできる水膜の組成を推定した。同一の(水/海塩)-質量比のもとでは水膜の特性が、上述の抽出水溶液のそれと等しいとして、水膜の比重や比抵抗を求め、水膜の厚さおよび実際の抵抗を見積もった。海塩付着量(Ws)が10^<-2>g/m^2以上の場合には(水/海塩)-質量比とRHとの関係は一本の曲線の上に乗り、1)水膜厚さはWsに比例すること、2)水膜の組成や導電率は、Wsに依存せず、RHだけで決まること、がわかった。実機では面積が十分に広いと考えると、アノード/欠陥-間の抵抗はいわゆる面抵抗で液抵抗-単位長さ、単位幅当たりの水膜の抵抗で、比抵抗を水膜厚さで除したもの-に等しい。水膜が均一だとすると、腐食性が温和な(逆にいうと防食しにくい)Ws=10^<-3>g/m^2、RH 40%であっても必要とする電圧は4.8V程度であり、本防食法が実用可能である見通しが得られた。 水晶微量天秤(QCM)のFe電極上に所定の量の海塩を付着させ、種々の相対湿度(RH)下でFe電極にアノード(あるいはカソード)電流を流しつつ、そのときのFeの腐食速度をQCMによって、またその電位をKelvinプローブを用いて測定した。海塩付着量10^<-2>g/m^2、RH 70〜90%における内部分極曲線-正味のアノード分極曲線(Feの腐食速度)と防食電流と正味のアノード電流との差から求められる正味のアノード分極曲線-を求めることに成功した。また、この結果を基に、Feの腐食速度が1μm/y以下となるための防食電流および防食電位は、湿度によらずおおよそ20μA/cm^2および-750mV vs.SCEであることが分かった。
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