アクリル、ソーダガラス、パイレックスガラスを試料にして、高出力パルスレーザー光を試料表面、および、試料内部に集光照射した際の、表面、及び試秤内部の変化を、ナノ秒の時間分解能で撮影することに成功した。 試料表面に集光した場合、表面でのアブレーションによるプラズマの生成とその後の衝撃波の伝播とともに、試料内部でも入射軸上で吸収が発生するのが観察された。これは、レーザー光の自己収束効果により、内部でも多光子吸収が発生したためである。多光子吸収の発生の様子は、アクリルとガラスの場合では異なることがわかった。アクリルの場合、レーザー入射軸状の多数の孤立点でほぼ同時に吸収が発生し、その吸収点を中心にした円形の衝撃波が内部へ進展していく様子が観察された。同時に、表面でのアブレーションによる衝撃波が内部へも伝播する様子が、撮影された。一方ガラスでは、試料内部で吸収が発生し光軸に沿って表面側へ吸収点が連続的に移動する様子が観察された。この場合の衝撃波は、個々の球状ではなく円錐状の波面を形成していた。 内部に集光した場合には、表面からのアブレーションは見られず、内部での吸収の発生と衝撃波の伝播が観察された。 内部の損傷は、レーザーパルス終了後も、アクリル試料の場合ミリ秒のオーダーにわたって、ガラス試料の場合でも数百マイクロ秒にわたって変化した。パルスの累積効果は、初期ほど損傷の広がりが大きく、数十パルス後では損傷が表面に達し、内部は変化しなくなった。吸収点は表面に移動し、表面のみでのアブレーションが観察された。 以上のように、透明試料の内部における加工現象を、ナノ秒の時間分解能で観察することに成功し、内部での損傷の発生と進展について、多くの知見を得ることができた。この方法は、マーキングや光学的データ記録、フォトニックス材料の加工プロセスなどへ、応用可能である。
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