前年度の予備的な検討をふまえて、より、広範囲な実験条件下で研究を進めた。 100h、および1000hメカニカルアロイングしたTi-37.5mol%Si組成の粉末を実験に用いた。前者の粉末はTiとSiからなるラメラ状組織を呈している(ラメラ粉末とする)のに対して、後者は長時間のMAで均一な組織となり、X線回折ではいわゆるアモルファスライクなプロファイル(アモルファス粉末とする)を示した。加熱に伴ってラメラ粉末は発熱量の少ない複数の反応を経てシリサイドが生成された。これに対してアモルファス粉末は単一の大きな発熱反応(885K)で一気にTi_5Si_3が生成された。これらの粉末を一定圧力、および一定昇温速度で真空ホットプレスした。アモルファス粉末はTi_5Si_3への相変化温度と対応した温度で焼結体密度の特異的な増加が認められた後、焼結体の密度増加は停止した。これは、相変化によってアモルファス粉末はほぼTi_5Si_3単相となるため、このような低温では、粉末の変形が困難であったためと考えられる。これに対してラメラ粉末においても相変化時に焼結体密度の増加が見つめられたが、化学両論組成とは異なるシリサイド(TiSi)が生成し、さらにTiとSiが残存するため、相変化後も密度の増加は継続した。両粉末とも、真空ホットプレス圧力の増加とともに相変化時の密度変化量は増大した。このような緻密化挙動は相変化に伴って粉末粒子が特異的な塑性変形を生じたためと考える。 真空ホットプレス温度がさらに上昇し約1050Kから再び焼結体の密度が上昇を始めた。前述のように低温域においてはTi_5Si_3の特性から粉末粒子の変形が不可能であり結果として密度増加が生じなかった。従って高温域では全く別のメカニズム、すなわち粒界すベりによって緻密化が進行したと考えられる。
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