研究概要 |
真空中および通常のシールドガス中においてアルミニウム合金とオーステナイト系ステンレス鋼の高出力YAGレーザ溶接を行い,その溶接時のキーホール挙動と気泡およびポロシティの生成状況ならびに湯流れをX線透視映像法を用いて観察し,レーザ溶接時の溶込みの増加とポロシティの低減に及ぼす真空度の影響について検討した.その結果,(1)高出力YAGレーザ溶接時には,いずれの材料においても,大きな気泡がキーホール底部先端部から発生し,溶融部上部や表面まで達成し,消失するものもあるが,トラップされたものがポロシティとなることが判明した.(2)ステンレス鋼溶融部内底部での湯流れはYAGレーザ溶接の方がCO_2レーザ溶接時より激しく,キーホール周辺での湯流れも異なることが判明した.(3)真空中YAGレーザ溶接では,真空度の増加と共に,溶込み深さが増加し,ポロシティのない溶接部の生成が可能であった.(4)真空・低圧下でのレーザ溶接では,キーホール底部が大きく膨らむが,キーホール先端部からの気泡の発生がないためポロシティの生成がないことが判明した.(5)真空度が高くなるにつれて,キーホールは深くなり,その口から噴出する金属蒸気の流速が速くなって溶融部底部での湯流れが弱くなった.その結果,気泡の発生が少なくなり,ポロシティが減少した.(6)大気圧不活性シールドガス中と真空中でのレーザ溶接では,湯流れ方向が逆であることが判明した.以上,キーホール挙動,気泡およびポロシティの生成挙動ならびに湯流れ現象を明らかにし,ポロシティの防止に及ぼす真空溶接の効果を確認し,高品質・高速レーザ溶接法確立のための知見を得た.
|