研究概要 |
現在,最強の永久磁石材料としては,1984年に発見されたNd-Fe-B系が広く実用化されている.これまでにも新しい高性能磁石の開発が数多く行われてきたが,Nd-Fe-B系に取って代わる材料は見いだされなかった.しかしながらNd-Fe-B系磁石の発見から既に10数年を経ており,さらに優れた特性を有する新しい磁石材料の出現が強く求められている. 永久磁石の性能評価には「最大エネルギー積」が用いられる.この値が大きいほど優れた永久磁石といえるが,そのためには保磁力および磁化(残留磁化)を向上させることが必要である.しかし一般に,保磁力の高い材料は磁化が低く,逆に磁化の高い材料は保磁力が低くなる傾向があり,その両立は困難であった.近年,この問題点を解決する手法の一つとして,従来のNd-Fe-B系のようなハード磁性相単相の磁石ではなく,保磁力の高いハード相に高い磁化を有するFeなどのソフト磁性相を複合化させ,各相が交換相互作用することにより高保磁力・高磁化という,ハード・ソフト両方の特徴を併せ持つ複合磁石の作製が試みられている.筆者らはMAプロセスの簡素化をねらってナノ結晶粒になっているが,非晶質に達していない状態と磁気特性との関連について種々調査した結果,十分な保磁力および非常に大きな磁化を有する磁性粉末試料の作製に成功した.
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