本課題研究では、鋼に匹敵する高強度・高靱性および腐食環境下での使用を考慮した耐候性オーステンパ球状黒鉛鋳鉄の開発を目指した。また、金属材料の腐食防止及び診断・評価の見地から材料の表面腐食特性に対する簡便かつ客観的判定評価法の確立のために、腐食表面のその場観察によってその分布、形状および進行度をフラクタル指数として表面腐食判定評価システムの構築を行った。さらに、開発材料の耐腐食特性を電気化学的試験で実施し、その特性の評価を行うものである。 試験材料は、耐候性の向上に興味が持たれるNi-Cu系の合金球状黒鉛鋳鉄とその比較材にFCD500相当の球状黒鉛鋳鉄および白鋳鉄を平成11・12年度に継続して用いた。 腐食性の面から優れた特性を示す鋳鉄材料の各種基地組織におよぼす耐食性への影響について明らかにした。腐食試験は、弱酸系溶液である0.1NH_2SO_4、および希薄な非酸化性の酸である酢酸塩(1%CH_3OOH+0.5%NaCl)水溶液を対象に、自然電位の測定と定電位分極法によりアノード電極電位掃引測定により特性評価を行っている。球状黒鉛鋳鉄よりも合金球状黒鉛鋳鉄は、NiとCuの添加により試料表面に保護皮膜を生成することにより腐食の進行を阻止し、高い耐食性を示した。その中でも基地組織が均質に微細化したマルテンサイトやオースフェライト組織を持つ鋳鉄は、不動態維持電流密度が小さく耐食性に優れていた。 一方、フラクタル次元解析手法を用いた腐食の進行状態の判別評価システムにおいては、平成12年度に引き続き鋳鉄材料を主体とした弱酸および弱アルカリ塩類水溶液中で行い、表面腐食状態を画像処理装置によって腐食形態のパターン認識が可能となった。 今後は、これを基に、腐食の特徴類型化を図り、表面腐食の進行を腐食予防および診断・評価の見地から客観的評価判定基準を作りたい。
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