クロム、カドミウムなどは環境負荷性の高い元素として、21世紀においてはその使用が規制されていく運命にある。クロムめっきは硬質皮膜、耐食性皮膜、装飾性皮膜として、カドミウムめっきは耐食性皮膜として高い機能性を示してきたが、今後は環境負荷性とのバランスで、使用は規制されていくことになるであろう。そこで代替材料が必要となる。本研究者はクロムめっき代替としてニッケル-すず系に着目し、ニッケル、すずを単層状態で鉄鋼材料上に10μm程度析出させ、炉中で加熱することにより、ニッケルとすずの金属間化合物皮膜を析出させることに成功した。加熱方法をレーザー照射に変えることにより、短時間で同様の金属間化合物皮膜を得ることができることが明らかとなった。このプロセスをカドミウムめっきの代替としての合金めっき、すず-亜鉛系に適用した。すず、亜鉛、あるいは亜鉛、すずの順に鉄鋼材料上に単層状態で積層させ、これを炉中にて350℃から550℃の温度にて数時間加熱した。X線回折の結果から、未処理の試料の場合は、すずと亜鉛の回折ピークが認められ、すず、亜鉛の単層が明確に存在することが示され、SEM-EDXによってもこれが確認されたが、加熱処理をすると、処理が進行するにつれ、亜鉛、すずのピーク強度が次第に低下し、ブロードになるのが観察された。これは炉中加熱によりまずより低融点のすずが溶融し始め、液相のすずが固相の亜鉛と反応し合金化が起こるため、すずと亜鉛の共晶組成の皮膜、未反応ののわずかなすず単層、亜鉛層は熱処理が進行するにつれ、その量は減少したため、それに対応してX線の回折ピークも低くなったものといえる。加熱プロセスをレーザー照射に変えて同様の検討を行ったところ、合金化の傾向は同じであるが、それに要する時間は大きく短縮された。
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