研究概要 |
今年度は,以下の3点について研究を行った。 1.溶融SnおよびSn-In合金の熱伝導度 Sn-In合金は鉛フリーはんだの基本合金の1つであるために取り上げた。熱伝導度の測定は,昨年度溶融金属への適用可能性を確かめた「絶縁被覆した非定常熱線法プローブ」によって行った。溶融Snの熱伝導度は300℃で約30W/mKであり,温度上昇に対してわずかに増加した。また,Inの添加により熱伝導度は低下し,その温度依存性が小さくなることを明らかにした。 2.高温の金属におけるWiedemann-Franz則の適用性 自由電子理論によるWiedemann-Franz則の導出過程を再検討したところ,本法則を高温金属に適用する場合,自由電子の比熱を用いていることが1つの問題となることが分かった。この問題を回避するために,現実の金属の状態密度から電子比熱を計算し,その値と電気伝導度の値を用いて熱伝導度を推定する新しい式を提案した。この式の妥当性は,様々な金属の熱伝導度の実測値に基づいて,今後ざらに検証する必要があるが,式自体は,原理的には固体・液体の区別なく成立すると考えている。 3.アルカリシリケートガラスの熱伝導度に及ぼすフッ素の影響 Li_2O-SiO_2およびNa_2O-SiO_2あ各系にLiFおよびNaFをそれぞれ添加し,溶融状態において非定常熱線法により熱伝導度を測定した。いずれの系においても,フッ化物の添加とともに熱伝導度は低下した。シリケートの熱伝導度はその網目構造の結合性に強く依存するため,この熱伝導度の低下はフッ素による網目構造の切断に起因すると考えている。
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