研究概要 |
Arの放電プラズマに誘起されたBrCNの解離励起反応を用いて硬質のアモルファスCN膜を作成し、同時に高分解能発光分光法を用いた反応場解析を行った。本年度は特にマイクロ波プラズマおよびECRプラズマプロセスに対し、Arイオンが関与する反応過程に重点をおいて、以下の研究を行った。 (1)マイクロ波プラズマCVD装置において、以下の測定・解析を行った。(1)放電部と反応部の中間にグリッドを装着して、CN(B-X)発光スペクトルを観測した。スペクトルの強度分布にもとづき、グリッドを装着して荷電粒子の影響を取り除くと、Arの準安定原子(Ar(^3P_<0,2>))からのエネルギー移動により、BrCNが解離励起することを確認した。(2)反応系にSF_6を添加して、その添加量に対するCN(B-X)発光の強度変化を測定した。BrCNの他に参照としてCH_3CNからのCH(A-X)発光およびKrの共鳴線のスペクトル強度について同様の測定を行い比較・検討した。その結果、CN(B)状態の低い振動準位はArイオンからの電荷移動によるBrCNイオンの生成と、それに引き続くBrCNイオンと熱エネルギー程度の自由電子との再結合反応で生成すると結論された。(1)、(2)の結果を総合すると、マイクロ波CVDではBrCNの解離励起過程は次の2つの反応が競争して進行することが示された。 (a)Ar(^3P_<0,2>)からのエネルギー移動(CN(B)状態の高い振動準位が生成) Ar(^3P_<0,2>)+BrCN→CN(B)+Br+Ar (b)Ar+からの電荷移動によるBrCN+の生成と、それに引き続くBrCN+と自由電子との再結合反応 Ar^++BrCN→Ar+BrCN^+ BrCN^++e^-→CN(B)+Br (2)ECRプラズマ装置に対して(1)CN(B-X)発光スペクトルの測定および(2)Arプラズマに対する電子プローブ測定を行った。(1)の結果、スペクトルの形状は上記反応(a)のものとは著しく異なりCN(B)状態の低い振動準位のみが生成していた。(2)の結果、電子衝撃によるCN(B)状態生成の閾値エネルギー7.4eVよりも高いエネルギーをもつ電子の割合は小さいことがわかった。これらの結果を総合すると、ECRプラズマにおいては反応(a)が進行する確率はきわめて低く、CN(B)状態は主に(b)の過程で生成することがわかった。 (3)ECRプラズマを用いて作成されたアモルファスCN膜は硬度70GPaを達成した。この値はアモルファス物質としては世界最高である。この結果は新潟日報紙に掲載された。また、この研究に対し、新潟日報文化賞が授与された(グループの代表者として齋藤秀俊が受賞した)。
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