Al相へのAgの固溶量が温度によって大きく異なるAl-Ag系において固溶量と多孔質Ag微粒子の生成量の関連についてはこれまでほとんど明らかでなかった。固溶量が大きく異なる種々のAl-Ag前駆体合金の作成を試み、それらをデアロイング処理を行い、Ag粒子生成との関連について主に検討を行った。 種々の組成のAl-Ag合金を高周波炉でアルゴンガス中で溶解し、液体急冷法の一種である回転水噴霧法で冷却速度約10^4〜10^5K/sで平均粒径約200μmの急速凝固粉末試料を作成した。この一部をAl中にAgを完全に固溶させる処理(溶体化処理)とAlにAgをほとんど固溶しない析出化処理を行い、これら3種類の粉末前駆体についてデアロイングを行った。 液体急冷法で作成した試料ではほぼAl単相に近い過飽和固溶体であった。この過飽和粉末をAl単相温度で保持後水焼入れを行った試料ではAl単相にはならず、Ag_2Al相の強いピークが認められ、Agの過飽和度を十分に高く出来なかった。また、析出処理を行ったものではAl相中へのAgの固溶量は無視できるほどのものであった。 デアロイングを行った結果、Agの多孔質微粒はAl相中に固溶したAgから生成し、Ag_2Al相はデアロイングされず、Ag相生成に寄与していないことが明らかになった。結論として、添加したAg量に対して急速凝固前駆体の場合には約80%以上のAg微粒子が得られたが、固相の溶体化処理では20%以下であり液体急冷による前駆体作成が極めて優れた方法であることが判明した。また、これによって得られたAg粒子は比表面積が25m^2/g程度であり、過酸化水の分解反応などに極めて高い触媒特性を示し、その他の触媒反応について今後の発展が期待される。
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