合金の凝固過程において、特にその初期における組織形態を明確にすることは、凝固工学の重要な課題となっている。従来、困難とされていたデンドライト凝固界面の熱伝達係数を評価するために強磁場中における強制対流条件下での伝熱挙動を測定した。銅製の2つの異なる径の円筒を用いて、そのドーナツ上のチャンネル内に電気伝導性流体が流れるような容器を作製した。チャンネル内の径方向の3点と2つの容器壁の5ヶ所の温度測定を行った。チャンネル内の流体には径方向に直流電流、鉛直方向に強磁場を印加し、ローレンツ力を週方向に作用させるようにした。実験では一定の定常的な境膜を実現させ、その内部の温度分布を測定することによって流体と容器壁との境膜内熱伝達律速における伝達係数を算出した。これまでで、超伝導マグネットのボア内に容器と温度制御装置を組み入れる実験装置の組み上げと、温度測定に対しては熱電対とデータロガー、FFTアナライザおよびパソコンで構成される測定システムの組み上げを完了しており、様々な流体を用いる立ち上げ試験を繰り返してきた。そして、食塩水等の熱伝達率の既知である流体を用いた基礎実験と測定値の比較により信頼性のある装置を構築できた。そこでは、また、古典的な円柱側面の境膜理論と一致する結果も得ており、理論的な解析もある程度完成した。現在、凝固反応を伴う実験をPb-Sn系、Bi-Sn系合金を用いて開始しているが、熱電対の測定誤差が多少問題を残しており、装置を改良中である。
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