本研究は、磁性粉体であるマグネタイトをシード粒子としてチタンアルコキシドの加水分解反応により、チタニアコーティングを行い、磁性酸化チタン光触媒微粒子の製造プロセスの開発を目指すものである。実験は、アルコキシド濃度と水濃度を変化させ様々な分散剤を用いて複合微粒子の合成を行い、結晶化させるための熱処理温度を変化させた。その後、エネルギー分散X線分光分析によってコーティング状態を検討し、粉末X線回折によって酸化チタンの結晶形を測定し、振動試料型磁力計によって複合微粒子の磁化率を測定した。また、熱処理後の複合微粒子を用い、ブラックライトを光源として色素ローダミンB溶液の分解実験を行った。得られた主な実験結果は、要約すると以下のようになる。(1)アルコキシドと反応する水を一括添加するよりも連続滴下するほうが、マグネタイトにチタニアを均一にコーティングすることができる。その時、アルコキシド濃度が0.2mol/lおよび水濃度1.5mol/l以上の条件でなければならない。(2)アルコキシド濃度および水濃度を変化させることによって、光活性を示すアナターゼ型の結晶になる。(3)チタニアコーティング時に、分散剤としてヒドロキシプロピルセルロースを用いることで、コーティング状態の良好な複合微粒子が得られる。(4)有機物分解特性を示すためのチタニアコーティング量は、光触媒微粒子1gに対してチタニアの付着量が0.7g以上必要である。(5)最も効果的な有機物分解特性を示す熱処理温度は、結晶化度や比表面積を考慮すると、500℃程度である。また、このときの試料は十分な磁性を持つことを確認した。(6)チタニアとマグネタイトの間にシリカ層を設けることで、有機物の分解速度は飛躍的に増加する。(7)また、太陽光に含まれる紫外光でも有機物の分解反応が進行することから、自然環境下における水質浄化プロセスへの展開が期待される。
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