研究概要 |
多形結晶の析出においては種々の添加物や溶媒の影響を受けるため、この制御技術は食品、医薬品などのファインケミカル工業において特に重要な問題となっている。本研究では、添加物や溶媒の結晶多形制御への応用技術を確立することを目的として、添加物や溶媒組成と結晶多形の析出挙動の相関性について系統的な検討を行ってきた。具体的には、これまで多形を有する物質としてL-グルタミン酸を用い、添加物としての他のアミノ酸存在下での晶析を行ってきた。検討の結果,これら他のアミノ酸は、L-グルタミン酸の成長速度を変化させるのみならず、モルフォロジーを変化させることが明らかになった。特にL-フェニルアラニンについては単一結晶を用いて、成長速度の測定ならびに原子間力顕微鏡を用いた検討により、提案した添加物効果のモデルが妥当なものであることを確かめた。さらに、L-グルタミン酸の析出速度の測定からL-ロイシンなどの影響がアミノ酸の分子構造に依存して異なることを認めた。さらに、これらの添加物分子が結晶中に取り込まれるかどうかについても検討を行い、アミノ酸種と混入量の関係についても考察を行った。さらに、本研究では医薬の一種であるチアゾール誘導体を用いてこれらの結晶多形の析出挙動に及ぼす溶媒組成や他の操作条件の影響についても検討を行った。これまでの検討により、溶媒の効果が各多形の溶解度を変化させるとともに、析出挙動をも変化させること、さらには、温度やその他の操作条件の効果が明らかになってきた。これらの成果は今後の多形制御技術の確立に有用な情報を与えるものと確信している。
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