個々の構成粒子の動きを運動方程式にもとずいて追跡して粉体の挙動をシミュレートする粒子要素法シミュレーションは、粉体現象の微視的情報を与え、粉体現象の理解を各段に深めるとともに、計算機実験により粉体操作の設計についても極めて有用な知見を与えている。しかし、このシミュレーション法は二つの課題を持っている。一つは、粒子要素として球形粒子を用いるために、粉体現象に大きな影響を与える粒子形状の効果を考慮できないこと、ならびに計算負荷が高く、実際の大規模粉体現象の直接シミュレーションが出来ないことである。 本研究では、まず粒子形状の効果を考慮するシミュレーション法を提案した。粒子要素法における粒子形状は濃厚粉体層の挙動と流動粉体層に分けて考えるべきで、濃厚系では結合要素、流動系ではフーリエ解析にもとずく粒子形状の考慮法を提示した。加えて、少粒子系シミュレーションである粒子要素法の粉体プロセス設計への利用法を提示するために、複雑に変化する電磁場内での粒子挙動ならびに粒子群のふるい分けや粉体圧縮成形操作の解析も行った。 つづいて、大規模粉体現象の直接シミュレーションの可能性を有する新しいシミュレーション法を提案した。一つは、粉体の連続体近似にもとずくSmoothed Particle要素法、もう一つはオートマトンを利用する粉体オートマトンシミュレーションである。Smoothed Particle要素法で最も重要な流動粒子群の構成方程式を見出し、粉体の重力ならびに振動流動挙動のシミュレーションに成功した。また粉体オートマトンについても、粉体系のオートマトンルールを独特の考え方により見出し、粉体系の重力流動を精度高くシミュレートすることに成功した。とくに、本シミュレーション法は、コンピュータの計算負荷が低く、粒子法による大規模粉体現象のシミュレーションに有用である。
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