研究概要 |
半導体エッチングプロセスおよび洗浄プロセスで使用されているフッ素系特殊ガスは、フロンや二酸化炭素と同様に地球温暖化に多大の影響を与えている。有毒なフッ素系特殊ガスを金属塩化物や金属酸化物と低温(80℃〜400℃)で化学反応させてフッ化金属に変換する新しい無害化処理技術を検討した。化学反応を利用した無害化処理法は、半導体製造工程で使用されている様々なフッ素系特殊ガスの処理に適用できるだけでなく、フロンガスのような難処理ガスの無害化にも応用が期待されている技術である。 フッ素系特殊ガスを無害化するために、反応容器にはハステロイ製の耐圧セル(内容積60ml、最大30気圧)を用いた実験装置を試作した。実験は乾燥した塩化金属を秤量後、セル内に導入した後、反応セルおよび装置配管内を真空ポンプで約10分程度脱気する。フッ素系ガスは任意の圧力でセルに導入され、パネルヒーターにより一定の速度で昇温される。固体試料の昇温速度は80℃までは3℃/分で行い、予測される反応開始温度付近では約0.5℃/分の昇温速度を保った。この間、温度と圧力は自動記録装置で連続的に記録した。本装置によって、特殊ガスと反応物の反応前後の温度変化と圧力変化が計測可能である。実験によって得られた反応生成物はX線解析装置(X-RAY Diffractometer System,日本電子(株))によって定性分析することにより確認した。 特殊ガスと塩化金属をそれぞれ等モル導入し、化学反応させる過程における温度、圧力および反応剤量の影響を回分式実験によって調査した。反応開始温度はそれぞれの塩化金属で異なっており、AlCl_3で80℃、CaCl_2で160℃、MgCl_2で約180℃付近から化学反応が急激に進行していることがわかる。これらの化学反応はどれも最高温度が約200℃を超える発熱反応であったが、特殊ガスの一般処理に適用されている燃焼処理(800℃)に比較してかなり低温で処理することができた。三フッ化窒素を含む混合ガスを塩化金属を用いて低温(80℃から300℃)で処理できることを確認した。
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