MCM-41に代表されるメソポーラスシリカは規則的なヘキサゴナル型細孔構造をしており、極めて均一な細孔をもっている。また、鋳型となるミセルの大きさを変化させることで細孔径を厳密に制御できる。カーボンも魅力ある材料であるが、MCM-41のような規則的な細孔構造をもつ多孔質カーボンはいまだかつて合成されたことはない。カーボンは材料として高い性能をもっており、MCM-41と同様な細孔構造をもつメソポーラスカーボンが合成できれば触媒、吸着、ガス分離、電気化学などさまざまな分野で画期的な材料になることは間違いがない。そこで、本研究では界面活性剤の棒状ミセルを鋳型とすることで規則的で均一な細孔をもつメソポーラスカーボンの合成を目指した。 まず、界面活性剤として非イオン系のポリオキシエチレンオレイン酸エーテル(C_<17>H_<33>-(O-CH_2-CH_2)_n-OH)、炭素前駆体としてショ糖を用い、メソポーラスカーボンの合成を試みた。ショ糖は硫酸存在下で炭素化するので、上記の溶液に硫酸を加えて炭素化を進行させた。しかし、生成した炭素には規則的なミセル構造を反映した細孔構造が見られなかった。これは用いたポリオキシエチレンオレイン酸エーテルが硫酸と反応し分解するためであることがわかった。そこで、界面活性剤として陽イオン系のセチルトリメチルアンモニウム塩を用いた。この界面活性剤は硫酸に対して安定であり、高濃度の硫酸中でもミセルを形成した。界面活性剤とショ糖の混合比、それぞれの水溶液中の濃度、処理温度などを変化させ、ミセル構造に及ぼす影響調べ、目的とする棒状ミセル形成のための最適条件を探索した。その結果、それぞれ適当と思われる条件が見つかり、棒状ミセル構造をもった炭素/界面活性剤複合体を作成することができた。しかし、本条件で生成したものは炭素前駆体であり、今後はさらに炭化度を高める必要がある。また、複合体の段階では細孔構造は発達しておらず、界面活性剤を除去した段階で細孔構造の分析を行う予定である。
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