研究概要 |
有機パラジウム錯体を溶解させた液体を薄く固体表面上に展開した担持液膜触媒を調製し,ヨードベンゼンとアクリル酸メチルのHeck反応に応用して,活性と再利用性を検討した。(a)触媒調製 展開液として水あるいはエチレングリコールを用いた。パラジウム塩と水溶性のホスフィン配位子を展開液に溶解させて不活性ガス中で有機パラジウム錯体を生成させたのち,支持体であるシリカゲルとトルエンを加えて混合させた。続いて濾過,真空乾燥することにより,担持液膜有機パラジウム錯体触媒を調製できることが分った。ニッケルについてもこの方法で担持液膜触媒を調製できることを示した。(b)触媒反応 調製した担持液膜触媒を用いてトルエンを溶媒としたHeck反応を行い性能を調べた。展開液が水,エチレングリコールどちらの場合にも触媒は活性であり,ほぼ100%の選択率でHeck反応生成物が得られた。ふたつの展開液を比較すると,エチレングリコールを用いた触媒の方が高活性であり,反応温度が高くても安定にリサイクルすることが可能であった。しかし,反応温度が150℃以上で触媒は徐々に劣化する傾向が見られた。これは,高温で液膜が壊れることに一因があるものと思われた。触媒金属と展開液量を一定として支持体シリカゲル量を増加させると活性が向上することが分った。これは,液膜が簿くなると触媒として有効に働く有機金属錯体の割合が高くなるためと考えられた。担持液膜触媒は反応系を不均一化する有効な方法であることが分った。 担持液膜触媒とともに通常の担持金属触媒についても有効性を検討した。その結果,有機金属錯体触媒よりも活性は低いがリサイクル可能な触媒となることを示した。
|