研究概要 |
多孔質シリカゲルを支持固体,エチレングリコール(EG)を支持液膜として有機パラジウム錯体を活性成分とする担持液膜触媒をヨードベンゼンとアクリル酸ブチルなどを反応基質とするトルエン溶媒中のHeck反応に応用し,総括反応速度に与える触媒調製条件の影響を詳しく検討した。 (a)支持固体の選択 幾つかの異なるシリカゲルを用いたところ,支持液体EGの濡れ性が異なり,安定な活性が得られない場合があり,親水性のシリカゲルが適当であることが分った。(b)支持固体と攪拌の影響 シリカゲルサイズを35-60meshと200mesh以下,攪拌速度を300rpmと500rpmと変えて実験を行ったところ,反応速度に影響は見られなかった。以後の実験では,シリカサイズ35-60mesh,攪拌速度300rpmとした。(c)EG量とPd量の影響 EG量,Pd量ともに,それらを増加させると,反応速度は大きくなる。しかし,EG量,Pd量が大きくなると,速度増加の程度は小さくなった。EG膜中のPd濃度を一定にして,EG量を増加させ反応速度の変化を調べたところ,Pd濃度が一定ならば反応速度は殆どEG量で大差なく,高Pd濃度の薄いEG膜を作れば良いことが分った。EG量を増加してもEG膜と溶媒との接触面積が増加するのではなく,EG膜厚が厚くなるものと推察できる。(d)分離とリサイクル 1時間反応に用いた担持液膜触媒を濾過で液体混合物から分離して回収した。トルエンで洗浄した後,自然乾燥させてから新たに溶媒と反応物を加えて再び反応を行ったところ,再使用が可能であり,使用回数が増えるにつれて反応速度が大きくなる傾向が見られた。回収・洗浄過程で,EG膜の状態が変化するのではないかと考えられる。(e)高圧条件での有効性 超臨界二酸化炭素という特殊な反応媒体中でも有効な触媒であることが分った。
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