原子法レーザー同位体分離において、同位体による吸収波長のわずかな違い(同位体シフト)を利用する方法が一般的である。しかしながら、同位体シフトが極めて小さい場合や標的同位体の超微細構造によるスペクトル広がりが同位体シフトよりも大きい場合には、核スピンの違いを利用した分離法が有効である。本研究ではガドリニウム(Gd)およびジルコニウム(Zr)の同位体分離に本手法を適用することを考え、本年度は、外部磁場による選択性の低下に関して計算機シュミレーションによる評価を試みた。本年度の実績は以下の通りである。 1.励起・電離ダイナミックスの解析コードの作成 レーザー励起ならびに磁場などの影響を考慮した解析コードを作成した。原子系のエネルギーレベルは磁気副準位まで考慮し、レーザー励起はインコヒーレント励起を仮定し、レート方程式により記述した。GdやZrの同位体分離に関して、レーザー強度や磁場強度を変化させて、選択性が評価できる形とした。 2.選択性に対する磁場の影響 本同位体分離手法においては、磁場の影響がかなり大きいことが、予備的な計算の結果明らかとなった。この影響は、とくにGdに対して大きい。具体的な計算の結果、たとえば、パルス幅50nsの励起用レーザーを用いる場合、3ガウス程度の磁場により、選択性が完全に失われてしまうことになる。実験的な検証が望まれる。
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