平成12年度は、メソ細孔シリカFSM-16(細孔径2.7nm)と有機-無機ハイブリッドメソ細孔シリカHMM-1(細孔径3.1nm)を鋳型として、遷移金属ナノ細線を合成し、構造解析、物性と触媒作用を検討した。その結果、以下の知見を新たに得た。 1.FSM-16にPt塩を含浸させ乾燥を十分に行うこと、及び光還元時に共存させるアルコールを2-プロパノールからメタノールに替えることで、より長いPtナノ細線を細孔内に合成できるようになった。 2.HMM-1を担体としてPtおよびRhナノ細線を細孔内に合成することができた。Rhナノ細線としては初めての例である。 3.HMM-1細孔内で、Pt-Rh、Pt-Pdナノ細線に合成することに成功し、これらは結晶性の高い合金ナノ細線であることを示した。合金ナノ細線としては初めての例である。また、HMM-1細孔内のナノ細線は特徴的なナノネックレス構造をもつことを明らかにした。 4.Ptナノ細線/FSM-16でブタン水素化分解反応を行うと、ナノ粒子よりも36倍高い水素化分解活性(TOF)を示した。ナノ細線という「形」が水素化分解「機能」を著しく向上させるという興味深い結果を得た。一方、Pt-Rhナノ細線/FSM-16ではイソブタンへの異性化活性が出現した。Pt-Pdナノ細線/HMM-1の低温での磁化率は、Ptナノ細線/HMM-1よりも著しく向上した。これは合金かつナノ細線構造という複合効果によるものである。 5.ベンゼン/エタノール混合溶媒中で四級アンモニウム塩を共存させてPtナノ細線/FSM-16を処理すると、一部のPtナノ細線を抽出できることが分かった。これまで、鋳型としてのメソ細孔物質をフッ酸で溶解(破壊)してナノ細線を回収することは行われていたが、非破壊的な回収法である化学的抽出法が可能となった。
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