研究概要 |
小環状オレフィンのメタセシス反応に適したナノ空間触媒を新たに見出すために,ゾル-ゲル法を利用して調製したナノ多孔性アルミナに,レニウム酸化物を固定化してオレフィンメタセシス用不均一系触媒の開発を行った.鋳型剤を用いたゾル-ゲル法により,アルミニウアルコキシドを多孔体骨格形成のための出発物質とすると,3ナノメートルを中心とする狭い細孔径分布を示すナノ細孔でできた高い比表面積を有するアルミナが合成できた.このナノ多孔性アルミナに過レニウム酸アンモニウム水溶液を含浸させ,空気中で焼成すると細孔壁にレニウム酸化物が高分散状態で担持されたレニウムアルミナを合成できることがわかった.レニウム酸化物の担持状態を電子顕微鏡写真で調べた結果,レニウム酸化物の微粒子をアルミナ表面上に観測することができなかった.この新規物質のオレフィンメタセシス活性を,末端オレフィンの1-オクテン,および内部オレフィンの7-ヘキサデセンを用いて調べたところ,高い触媒活性を示すことが明らかになった.また,市販品の多孔性アルミナに同様なレニウム酸化物を導入した触媒に比べ,メタセシス反応速度が約1.5倍向上することもわかった.さらに,目的物オレフィンへの選択性も高く,重合化や,二重結合の異性化などの副反応の抑制も行うことが明らかとなった. 現在,均一系メタセシス触媒の開発研究が全盛の中,活性の高い不均一系メタセシス触媒が新たに開発されたことは,化学工業プロセスへの実用的な応用の可能性があるため,これからの展開研究が大いに期待される.
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