金属含有オリゴシルセスキオキサンは、「厳密な構造決定や制御が容易である分子化されたシリカ担持触媒」として極めて興味深い化合物である。本研究では、全く新しい機能が期待できる新規材料の創製、および機能開発を目的として、新規遷移金属種および典型金属種含有オリゴシルセスキオキサンの合成、および金属種含有オリゴシルセスキオキサンの焼成等による不均一系触媒材料の開発を行っている。 本年度は、チタン金属含有シルセスキオキサンについて、有機配位子や金属の種類が、酸化物の細孔構造や酸性度等の物性に及ぼす影響を検討するとともに、ガリウムを金属を含有するシルセスキオキサンの新規誘導体を合成し、それらを前駆体として固体酸性を有する多孔質酸化物を得た。すなわち、種々の有機配位子を有する新規チタン含有シルセスキオキサンを合成し、それらを焼成して得られた酸化物の物性を検討することにより、酸化物の固体酸性・構造が前駆体シルセスキオキサンの配位子や構造の影響を大きく受けることを明らかにした。また、酸化物中のチタン種がナノサイズクラスターを形成していることを、各種の分光学的手段によって明らかにした。 さらに、ガリウム含有シルセスキオキサンのシクロペンチル誘導体[(c-C_5H_9)_7Si_7O_<12>]_2Ga_21および[C_<14>H_<19>N_2]^+[(C-C_5H_9)_7Si_7C_<12>GaCl]^-2の合成に成功した。また、1を焼成することによって、強いBronsted酸点を有し、細孔径が均一に制御されたミクロ孔に富んだ、表面積の大きな酸化物が得られることを見い出した。一方、2を焼成することによって、固体酸性には乏しいものの、ミクロ孔に加えて少量のメソ孔を有するなど、1の場合とは異なる構造を有する酸化物が得られることを見い出した。
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