研究概要 |
◎触媒調製:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドを鋳型剤としてメソポーラス多孔質体であるMCM-41を合成した。これを担体として,数種のスズおよび酸ジルコニウムを出発原料塩としてMCM-41担持酸化スズ(Sn/MCM-41)および酸化ジルコニウム触媒(Zr/MCM-41)を調製した。 加えて,他の多孔質担体にSnおよびZrを担持した触媒も調製した。 ◎ステンレス製オートクレーブを用いて加圧下での不均一液相反応を行った。反応原料は,不飽和カルボニル化合物であるクロトンアルデヒド(CH_3CH=CHCH=O)およびアセトフェノン(PhCOCH_3)とし,水素供給源には2-プロパノール,2-ブタノール等を用いた。 ◎実験結果:α,β-不飽和カルボニル化合物の1つであるクロトンアルデヒドの水素化反応においては,PtやRh触媒のような通常の水素化触媒を用いた場合,選択的にC=C2重結合の水素化が優先的に進行しブチルアルデヒドや1-ブタノールが多く生成した。同反応を2-プロパノールおよび2-ブタノールを溶媒としてSnおよびZr/MCM-41触媒を用い行ったところ,C=O基のみが還元されたクロチルアルコール(CH_3CH=CHCH_2OH)が選択率90%以上で得られた。溶媒アルコールの酸化物であるケトンが生成したことから,本反応は,2級アルコールからのカルボニル基への選択的水素移行反応で進行することが明らかとなった。 カルボニル化合物をアルデヒドから不飽和ケトンであるアセトフェノンに変え反応を行った。Zr/MCM-41触媒を用いることで,高活性・高選択的に目的生成物である1-フェニルエタノール(PhCH(OH)CH_3)が得られた。さらに,担体にAl_2O_3,TiO_2,ゼオライトおよび活性炭を用いて検討したところ,ゼオライトやAl_2O_3,TiO_2担持触媒は低活性であるが活性炭が高活性であることがわかった。担体としては,酸塩基性質のような機能を持たない多孔質担体が有効であることが示唆された。シンコニジンを修飾剤として光学選択性の発現の可能性を検討した。シンコニジンを加えない場合は,ラセミ休が生成したが,シンコニジンの添加によりS体が過剰に得られることかわかった。
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