スチレンモノマーはプラスチックスの原料として、世界で多量に生産されているが、プロセスはナフサの分解によりエチレンを得、エチレンとベンゼンからエチルベンゼンを合成し、さらに、エチルベンゼンの脱水素という3段階のプロセスを経て製造されている。このプロセスをシンプル化し省エネルギー化する試みとして、1段あるいは2段階で行う可能性を検討した。エチレンのような反応性の高いアルケンの代わりに反応性の低いアルカンを直接反応に用いてエチルベンゼンを合成する可能性を検討し、昨年度には白金-ゼオライト(H-ZSM5)触媒がエタンによるベンゼンのアルキル化に高い触媒活性を発揮することを見いだしたが、スチレンの収率はあまり高くなかった。 本年度は後段の脱水素を促進するため、すでに、本研究者らが見いだした、二酸化炭素によるエチルベンゼン脱水素促進効果を期待して、エチレンによるベンゼンのアルキル化を様々な触媒の存在下で行い、Ga_2O_3の添加がスチレン収率の向上に有効なことを見いだした。このとき二酸化炭素は大きくはないが、脱水素反応を促進する効果が見られた。また、エタンによるベンゼンのアルキル化をエタン加圧下で行うと、エチルベンゼンの収率が常圧下で反応を行ったときよりも高くなることを見いだした。さらに、エチレンによるベンゼンのアルキル化とエチルベンゼンの脱水素を同一の反応管で行うための触媒開発を行い、酸化マグネシウム担持酸化バナジウム触媒を見いだし、この触媒が二酸化炭素存在下で極めて高い脱水素活性を発揮することを明らかにした。また、エタンの脱水素に酸化チタン担持酸化ガリウム触媒が高活性を発揮することを見いだした。アルキル化とこれらの脱水素触媒を組み合わせることにより、一段階スチレンモノマー合成の可能性を見いだした。
|