研究概要 |
汎用高分子としてスチレンは多量に生産されているが、その工程はナフサの水蒸気分解によるエチレンの製造、エチレンによるベンゼンのアルキル化を経てさらに、エチルベンゼンの脱水素工程と3段のエネルギー多量消費型のプロセスとなっている。単純で省エネルギー型の新しいプロセスへの期待は大きい。この研究ではエチレンに代えてエタンを原料に用い、ベンゼンのアルキル化を行う可能性並びにエネルギー多消費型のエチルベンゼンの脱水素を一段階で行う可能性を検討した。 エタンによるベンゼンのアルキル化を種々のゼオライト触媒を用いて450-550oCの範囲で検討し、H-ZSM5,H-MCM41,H-MCM22などは活性を示すが、モルデナイトやY-ゼオライトは活性を示さなかった。酸強度分布に最適値があることがわかった。ゼオライト単独では活性は低くゼオライトに金属を他事する事によりエチルベンゼンの収率は向上した。最適の反応条件は以下のようになった: 白金6.8wt%を担持したH-ZSM-5触媒を用い、反応温度500℃において、エチルベンゼンの空時収率は14.2mmol/h/g触媒となった、また、スチレンの空時収率は0.8mmol/h/g触媒と低かった。これはベンゼン基準の収率としては7.3%,0.4%にそれぞれあたる。この反応では、エタンがまず脱水素されてエチレンになりその後アルキル化が進むことがわかった。 一段階でスチレンは得られなかったので、エチルベンゼンの脱水素を同一反応塔内で行うための触媒開発を行い、新たに酸化マグネシウム担持酸化バナジウム触媒が優れた性能を発揮することを見いだした。 この反応では、二酸化炭素が反応を促進し、脱水素反応中に失われた、バナジウム酸化物の格子酸素へ二酸化炭素から酸素が供給されることを見いだした。
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