自然環境には生物に対して多くのストレス要因が存在する。それには、温度、浸透圧、紫外線、圧力等の物理的な環境ストレスがあるが、最近では、様々な化学物質もストレス要因となっている。微生物は、これらのストレスに遺伝子レベルで敏感に反応する事によって生体の維持を行っている。海洋は、陸水に比べて多様性に富んだ環境が存在し、そこにはそれらの環境に適応進化して来た様々な生物が生息している。特に、海洋微細藻類は、海洋バイオマスの大部分を占めており、遺伝的にも多様な種が存在する。微細藻類の一種でもあり、原核生物として位置づけられる藍藻(シアノバクテリア)は、高等生物と同様な光合成系を有しており、かつ細菌としての形態を持つことより様々な遺伝子解析のモデルとして利用されて来た。 本年度は、このような海洋藍藻における各ストレス応答遺伝子エレメントのスクリーニングとタイピングを目的として、海洋藍藻Synechococcus sp.の小断片ゲノムライブラリーを構築し、プロモーター活性を有するDNAエレメントの検索を行った。Synechococcus sp.NKBG042902は広範囲の塩濃度に適応し生育するが、これより塩濃度に対応して発現制御を行うたのDNAエレメントが検索された。しかし、海洋藍藻を直接的に宿主とした場合、大腸菌を用いる場合より形質転換頻度が非常に低く、効率的なエレメントスクリーニングが難しいことが示唆された。そこで、小断片化ライブラリーをいったん大腸菌で構築し、それらをグルーブ化し、大量に調整して藍藻を宿主としてスクリーニングを行うこととした。
|