硫黄酸化細菌Thiobacillus thiooxidansは耐酸性を有し、細胞外の低pHと細胞内の中性のpHのギャップを利用してエネルギー(ATP)を獲得している。本研究では、細菌の耐酸性に関与していると思われる諸因子のうち、cytochrome cとATP合成酵素であるH^+-ATPaseを細胞膜より分離し、その性質を調べた。 1.cytochrome cの分離精製:菌体を破砕して得られた無細胞抽出液を遠心分離により、細胞膜画分と水溶性画分に分画した。膜画分に存在した膜結合型cytochrome cは塩基性タンパク質で、その分子量は18kDa、等電点は8.2であった。水溶性cytochrome cの分子量は10.1kDaで、酸化型は409.5nmに、還元型は416.5、522.0、および551.0nmに吸収スペクトルを持っていた。等電点は8.5であった。 2.H^+-ATPaseの性質:菌体の細胞膜に存在するATPaseは、F_0F_1型であった。ATP分解活性は、pH8.0、温度60℃において最大となった。また、活性はMg^<2+>の濃度に依存して増大し、4mM-Mg^<2+>で最大となった。T.thiooxidansのATPaseに特徴的な性質として、ATP分解活性が亜硫酸(SO_3^<2->)濃度に依存して増大することが分かった。
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