研究課題/領域番号 |
11650816
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三宅 克英 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (90252254)
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研究分担者 |
西島 謙一 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (10262891)
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キーワード | Streptococcus agalactiae / シアリルラクトサミン / シアリルルイス糖鎖 / L-selectin / MEL-14 |
研究概要 |
Streptococcus agalactiaeの生産する夾膜多糖の構造はシアリルラクトサミンのポリマーであり、動物細胞において発現する糖鎖と類似している。なかでも免疫系の細胞やある種のガン細胞ではシアリルラクトサミン構造を基本骨格とするシアリルルイス糖鎖などの糖鎖やガングリオシドが発現しており、転移や免疫賦活化などに重要な役割を果たしている。本研究ではStreptococcus agalactiae由来の夾膜多糖を用いて免疫系を賦活化させ、最終的にはガンの免疫療法につなげていくことを目的とするものである。これまでの我々の研究によりこの微生物多糖が種々の免疫系細胞を賦活化することが判明したが、本年度はこれらの応答が糖鎖を介して行われることを確認した。まずこの微生物多糖の抗血清を調製して多糖と同時に脾臓由来の細胞に加えたところ、細胞増殖の促進が抑えられることが判明した。抗血清は微生物糖鎖の糖部分にのみ反応するように調製してあるのでこれは免疫賦活化に多糖の糖鎖部分が必要であることを示している。次に免疫系細胞の側の何をターゲットとするのかという観点から糖鎖結合性蛋白質L-selectinに着目して研究を進めた。L-selectinはT細胞などの免疫系細胞に広く発現している。L-selectinに対する抗体MEL-14の効果を調べたところ微生物糖鎖の場合と異なり、単独では賦活化作用を示すことはなかったがCD3やCD28などの抗体と同時に刺激を加えると賦活化増強の応答を示すことが明らかになった。これらの結果はS.agalactiaeの微生物多糖がL-selectinだけでなく他のシグナル経路も活性化させて免疫系の細胞を賦活化していることを示唆するものであった。今後はこの微生物多糖によるシグナル経路の詳細な解析を進めるとともに、実際にガン細胞に対して増強された免疫系がどのような効果をしめすかといった点を中心に研究を行っていく予定である。
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