歯垢から分離されたCorynebacterium matruchotiiは、主にヒドロキシアパタイトからなる歯石形成に関与する。C.matruchotiiは生物の石灰化の機構を探る上で非常に重要であると考えられる。その石灰化に関連するリポタンパク質を脂質成分から精製した結果、1分子に少なくとも8分子のカルシウムを結合させることのできるリポタンパク質であることが判明した。おそらくこれが核になって、リン酸が結合し、やがてヒドロキシアパタイト結晶核へ成長するのではないかと考えられた。cpIXをコードするDNA断片をPCRで増幅し、p-BADベクターに接続して大腸菌へ導入した。大腸菌で発現させること成功したが、大腸菌を石灰化させるまでには至らなかった。リポタンパク質の性質をさらに調べた結果、脂肪酸の修飾が石灰化に必要であることが予想された。現在のところ、Corynebacterium内でCLPXのどのアミノ酸に、どのような脂肪酸が結合しているのか全く不明である。今後の課題として、大腸菌、Corynebacterium内でのCLPXの脂肪酸の修飾に関連するところを調べていくことが、最終的に微生物の石灰化のメカニズムを明らかにする上で非常に重要であると考えられた。
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