前年度に試作した中空糸型モジュールへ尿細管細胞を播種させ、マーカー物質を用いた分離実験をin vitro系で試みた。尿細管細胞を膜へ良好に播種させるには、潅流や培養の至適条件を確立する必要がある。本モジュールの内表面にイヌの遠位尿細管細胞MDCKを単層に播種させたが、接着因子の種類ならびに潅流方法、種細胞の潅流方法、培養条件(温度など)等の影響が複合的に関与しており、至適条件確立には至っていない。今後引き続き検討する予定である。 一方、本研究の最終目的である透析液再生型腹膜透析システムを構築するため、体外に取り出した患者腹膜透析液を高効率で再生する、培養細胞を用いないシステムの開発も前年度に引き続き検討した。具体的には患者腹腔と体外に設置したリザーバとの間にダイアライザを設置し、通常のシングルルーメンカテーテルを介して透析液の一部を断続的に出し入れする間に、腹膜透析液を外部透析により再生するシステムで、断続的流出入型腹膜透析(Bi-directional Peritoneal Dialysis)と呼んでいる。その溶質除去特性ならびに安全性について腎不全犬を用いたex vivo実験を通じ検討した。具体的には尿管結紮して2日たった腎不全犬に対し、断続的流出入型腹膜透析またはcontrolとした従来型腹膜透析を4時間施行し、尿素、クレアチニンの溶質除去効率を求めた。その結果、従来型腹膜透析に比べ、有意に高い溶質除去効率が得られ、一部の結果についてはすでに学会発表した。今後、外部リザーバの容量ならびに流出入速度による影響について検討し、至適透析条件の確立を目指していく所存である。
|