研究概要 |
腹膜透析で貯液した透析液を人工尿細管モジュールにより再生を行う、新しい治療システムの開発に着手したが、細胞培養に及ぼす種々の影響因子が存在し、安定した機能をもつハイブリッド型中空糸膜モジュール(人工尿細管)の試作は最後まで完成するに至らなかった。そこで、本研究課題の主たる目的である、透析液再生型人工腎システムの開発として、腹膜透析液を腹腔外で連続浄化・再生する断続的流出入型腹膜透析システム(Bi-directional Peritoneal Dialysis,BPD)を新たに考案し、その有用性を検討した。BPDはいったん患者腹腔内に貯液した腹膜透析液の一部を外部に設置したリザーバとの間を周期的に往復運動させ、途中に設置したダイアライザにより連続的に浄化再生するシステムである。腎不全犬を用いたex vivo実験を通じ検討した結果、長時間貯液させる従来型腹膜透析(Conventional peritoneal dialysis,CPD)に比べ有意に高い溶質除去効率が、尿素とクレアチニンで確認された。本法は、以下の特徴を有し、今後の臨床応用、汎用化が期待される。 ・腹膜透析液の連続浄化によって、高い溶質除去効率が得られる。 ・血液透析(Hemodialysis,HD)のような血液体外循環を伴わないため、抗凝固剤やブラッドアクセスが不要で、きわめて安全な治療が可能である。 ・専用装置を用いることにより、在宅で処方透析が可能である。 ・アルカリ化剤として重曹を用いることができ、アシドーシスの改善にきわめて有効である。 ・1日あたりの交換回数を減らすことによって蛋白漏出量を相対的に低く抑えることが可能である。
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