研究概要 |
昨年度、南極のヴァンダ湖から分離したBacillus sp.20-1を同定したところ、Bacillus cereus 20-1であることが明らかになった。そこで、昨年の段階で、目的物質が部分精製段階であったので、本年度は、単一にまで精製することができた。その結果、炭酸カルシウム塩結晶化抑制化合物は、分子量7,200ぐらいのペプチドであることが明らかになった。さらに、このペプチドは、リン酸カルシウム塩の結晶化抑制も示した。この結果から、カルシウム塩の結晶化を抑制できることが明らかになったが、リン酸カルシウム塩に関しては、一旦できた塩の再石灰化を促進することが明らかになった。この結果は、すでに特許に出願し、公開(特開2000-239180)されている。 上記菌株では、応用を考えると食品分野では利用できないので、ケフィア粒に含有される微生物が同様の活性があることを明らかにし、そのうち酵母由来のタンパク質を精製し、炭酸カルシウム塩結晶化抑制効果があることを明らかにした。その結果に関しては、すでに特許化し、現在、海外の英文誌に投稿中である。さらに、このケフィア粒に存在する微生物のうち、乳酸菌にも弱いながら同様の活性があることを見い出していた。そこで、食品工業分野で現在、利用されている乳酸菌9菌株を種々の培地で培養し、スクリーニングを行なった。その結果、0.1%(w/v)CaCl_2を含むYP培地で、30℃、定常期になるまでに静置培養したLactococcus lactis subsp.cremoris IF03422の菌体外画分に最も高い活性を見い出した。この培養液の上澄み液から、限外濾過(分子量3,000以上)、陰イオン交換クロマト(super Q)、ゲル濾過クロマト分析(Superose12)によって部分精製した。この部分精製標品には多糖が存在しており、プロテアーゼ処理によってのみに、その活性の低下が認められた。現在、特許出願準備中である。
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