(式1)に示す糖(N-アセチルグルコサミン、GlcNAc)残基を有する受容体基質の化学合成とエンドグリコシダーゼ(endo酵素)による糖鎖ブロック転移反応を組み合わせた「化学-酵素法」による複合糖質の実用的合成プロセスを構築し、複合糖質の糖鎖機能の解明と医薬・医療等への応用を計るすることを目的とする: R-GlcNAc-GlcNAc-Asn + GlcNAc-X → R-GlcNAc-GlcNac-X + GlcNAc-Asn (式1) [糖鎖供与体] [受容体] Endo-M [糖鎖転移生成物] R:糖鎖、 X:ペプチド等 本年度は第1段階である各種の複合糖質(糖鎖誘導体)のモデルの構築を中心に行い、実用的な合成法-固相合成法の開発への展開のための基礎的知見を得ることに重点を置いた。 1。糖鎖誘導体のモデル物質の合成: (1)生物学的に糖鎖付加の不可能なペプチドのグルタミン(Gln)残基への糖鎖導入を可能にした。 (2)神経ペプチドのサブスタンスP(SP)をモデルとして、そのGln残基に天然由来の糖鎖を導入し、糖鎖がその生理機能および安定性等に寄与することを認めた。 (3)非ペブチド性の糖誘導体へも糖鎖転移が可能であった。 2。酵素反応の基本プロセスの構築の為の基礎検討: (1)糖鎖供与体として大量かつ安価に調製できる卵黄由来の天然糖鎖を用い、高い反応収率で糖鎖転移生成物を調製することが可能となった。
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