高周波ヘリウムグロープラズマが発生でき、レーザーアブレーションによるプラズマへの試料導入が可能で、自己バイアス電流を流すことにより試料の発光スペクトル強度が増大させることが出来るグロー放電セルを開発して実験を行った。試料としてはCu及び蛍光X線用標準試料のFe-Cu合金を用いた。イオンサイクロトロン共鳴用電極に72KHzの高周波を加え、外部磁場を3kG付近(Cuイオンの共鳴条件)で変化させてヘリウムグロープラズマ中でのイオンサイクロトロン共鳴によるCuの選択励起を試みたが、Cuイオンを含めCuの発光線強度に大きな変化は見られず、高周波の吸収も観測できなかった。この原因としては、グロー放電管に導入するヘリウムガスの圧力は3Torr程度必要であるが、この圧力ではCuイオンとプラズマガスであるヘリウムとの衝突が非常に頻繁に起こるため、イオンサイクロトロン共鳴吸収のピークが非常にブロードになり、元素を選択励起するための高周波の吸収がほとんど起こらなかったためと考えている。 グロープラズマ中でのイオンサイクロトロン共鳴による元素の選択励起は成功しなかったが、本研究で開発したグロー放電セルに、レーザーアブレーション支援高周波ヘリウムグロー放電発光分光法という名前を付け、論文、学会講演、及び国際会議において公表した。 また、実験では試料をグロープラズマ中に導入するためにレーザーアブレーションを用いたが、レーザーアブレーションに伴い発生するレーザー誘起プラズマからの発光スペクトルを測定したところ、試料原子の発光強度が非常に強く、雰囲気ガスからの発光は弱く、バックグラウンド発光が非常に低いという分光分析に適した特性を持つことが分かった。また雰囲気ガスを替えると、特定のイオン線の発光強度が選択的に増加し、レーザー誘起プラズマ中での試料原子の励起機構の解明に有用な情報が得られたため、論文、学会講演、及び国際会議において公表した。
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