赤外光学顕微鏡にオプティカル・パラメトリック・アンプおよびAgGa結晶を用いた差周波発生装置を組み合わせた赤外顕微分光装置の開発を行っている。具体的には、差周波発生光源部からの光パルス(波長域3μm〜10μm)を、落射光学系を通してカセグレン対物鏡に導入することで、試料の照明を行い、試料面からの反射光をMCT赤外検出器を用いて検出している。また、これに、本年度購入した回折格子型モノクロメータを組み込むことでスペクトルの狭帯域化を試みている。これにより、サブピコ秒程度のパルス幅を有する赤外超短パルス光のスペクトルを、分子固有の振動スペクトルを測定できる程度に狭線化した。 さらに、サブミクロン以下の高空間分解能化を図るため、赤外顕微分光法における近接場観察の可能性を検討し、それを実現するための微小開口プローブの設計・開発を行った。設計した近接場プローブは原子間力制御ができるようカンチレバータイプとし、その先端の探針部に微小開口を有するものとした。作製にはシリコンプロセスを用い、まず、探針、カンチレバーのパターンニングをシリコンウエハー(200μm厚)上に行ったのち、シリコンのウエット酸化(950〜1050℃)によりSiO_2(1.0μm厚)膜を形成し、探針部以外のSiO_2をエッチングした。その後、ウェハー裏面にSiO_2マスクパターンを形成した上で、アルカリ溶液で異方性エッチングを行い、開口形成のためエッチングにより余分なSiO_2をはく離した。最後に、裏面から迷光成分除去のためのCr膜を蒸着した。作製した微小開口径は300nm〜500nm程度で、カンチレバーのバネ定数が5N/m、共振周波数が15KHzであった。シリコンプロセスを採用したことで、再現性の高い微小開口径を実現でき、かつ、複数のカンチレバーを同時に作製することを可能とした。
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